西の公募増資の余波は果たしてあった。JR各社は想定内も、「鉄道株が総崩れ」とはね…。
東は、水害による新幹線の冠水からコロナ禍、そして今回の公募増資の余波まで三たび大波に見舞われた。「やれやれの売り」は遠い。
株、増資ドミノ警戒で上げ相場に水 逆転に期待も:日本経済新聞
2021/9/2 12:50 [有料会員限定]
2日午前の東京株式市場で日経平均株価は朝高後に伸び悩み、下げに転じる場面があった。JR西日本が公募増資などによる大規模な資金調達を発表したのをきっかけに急落。「増資ドミノ」への警戒から鉄道株が総崩れとなった。足元の上げ相場に水を差した格好だが、市場では「やや過剰反応」という声も出ている。
JR西日本は一時16%超安の5020円まで売られ、年初来安値を更新した。公募増資などで最大2786億円を調達すると1日に発表し、株式の需給悪化や希薄化を懸念した売りに押された。1987年の国鉄の民営化後、公募増資はJRグループで初めてという。JR各社はコロナ禍で業績低迷が長期化しているとあって、JR東日本やJR東海、そして小田急電鉄、京成電鉄など私鉄各社にも増資を警戒した連想売りが広がった。
さらには昨年、公募増資に踏み切った日本航空(JAL)やANAホールディングスにも売りが波及。日経平均は朝方に200円近く上昇した後は急速に伸び悩み、年初来高値に接近していた東証株価指数(TOPIX)も失速した。
鉄道株などの下落を巡り、マネックス証券の大槻奈那専門役員は「株式市場では短期的に増資企業の拡大連鎖が懸念されやすいが、やや過剰反応ではないか」と指摘する。「上場企業で債務不履行(デフォルト)に陥った企業が少ない日本の信用(クレジット)市場では一時的な資本力の変化はあまり重要視されず、企業もどこまで危機感を持って対応するのか一概には言えない」からだという。
「急落後はある程度の戻りが見込めそうだ」(ケイ・アセットの平野憲一代表)との声も出ている。「旅行したいという人々の心理は国内外で高まっており、行動制限が緩和された後の旅客需要の回復は最も早くて勢いが激しい」(マネックス証券の大槻氏)と、大逆転に向けた期待もある。
ここ数日の日本株の動きは、米株と比べた出遅れ感がようやく解消に向かうかどうかという段階にすぎない。「現時点では先物の買い戻しにとどまっており、業種レベルでの上値追いにはまだ時間がかかる」(ケイ・アセットの平野氏)。しばらくは経済の「リオープン」を暗中模索する秋になるかもしれない。
〔日経QUICKニュース(NQN) 尾崎也弥〕
https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL02HAG_S1A900C2000000/